「呼子のイカ」は有名だけど、実は佐賀県って知られざる「食都」だった……。佐賀の名産をドカーンと紹介します!
佐賀の名産って何なの? ということは、私・ライターの中川淳一郎が東京から佐賀県唐津市への引っ越しを宣言した後、何度も聞かれました。その都度答えてきましたが、ほとんどの人は「呼子のイカ」ぐらいしかイメージがないことが分かりました。
それ以外を知らないということは由々しき事態である! 正直、私としては、過去に訪れたどの県よりも「こりゃウマいわ……」と脱帽することが多い。何とかその名産品を伝えたい!(私も呼子のイカしか知らなかったけど…) となれば、海の幸・山の幸に限らず焼き物など佐賀の名産品の普及促進を目指す「さが県産品流通デザイン公社」の人に話を聞かねばなるまい。ここでは同公社のSNS等における愛称「さがぴん」の「中の人」であるさがぴんさんに話を聞きました。
――「さが県産品流通デザイン公社」は何をするところですか?
さがぴん:佐賀の県産品の情報発信や販路拡大、海外市場の開拓などのお手伝いをしています。その一環として、「さが県産品流通デザイン公社」の略称として「さが」と「ぴん」で「さがぴん」としてSNSで情報発信するようになりました。
――そういった経緯で「さがぴん」なんですね。さて、ここからは佐賀の名産品をバンバン紹介してください。まずはいちごから!
さがぴん:佐賀のいちごでは、「さがほのか」が有名で、東京都中央卸売市場の品種別占有率は、「とちおとめ」、「あまおう」、「紅ほっぺ」に次いで、「さがほのか」が4位となっています。そんな「さがほのか」以来、20年ぶりの新ブランド「いちごさん」が2018年秋に生まれました!
――な、なんというド直球な名前ですかぁ!!
さがぴん:「いちごさん」は、「凛とうつくしい色と形」「華やかでやさしい甘さ」「果汁のみずみずしさ」が特徴です。日本のいちごの種類は全国に300種類以上あり、あくまでも「地名」や「形状」や「味わい」を表現するものが多いのですが、「いちごさん」については、正直「えっ、まさかこの名前が空いていたの?」と思いました。数多あるいちごの中で、ど真ん中に来るような、子どもから大人まで呼びやすく覚えやすいネーミングですよね。形状が美しくいちごのハート型、下垂型できれいな形状で、中まで赤いので断面がきれいです。更に瑞々しく、香りもよく、じゅわーッと口の中で広がるとよく言われます。
あと、「23時の佐賀飯アニメ」という佐賀の飯のPRアニメ動画も作りましたので是非ご覧ください。『23時の佐賀飯アニメ 第九夜「果汁決壊。いちごさん」』です。
――いちごについて佐賀は色々新規開拓しているんですね!
さがぴん:はい、そうです。みかんについても同様です。1986年以降30年以上にわたり「ハウスみかん」の生産量1位は実は佐賀県となります。「ハウスみかん」が食べられるのは主に夏ですが、太陽の光を浴びてすくすく育つ露地みかんは、9月下旬ごろから3月まで県内全域で生産・販売されます。みかんの生産が盛んな太良町の道の駅では、100種類ぐらいのみかんが置いてあり、今はコロナで置いてないですが、平常時はみかんの試食で食べ比べができるぐらいです。
そんな中、2月10日に新しいかんきつの品種を発表しました! みかんよりもちょっと大きい「中晩柑」で、名称は「にじゅうまる」になりました。食べごたえのある大きさと、爽快な香り。プチッとした食感と、一気にあふれるジューシーな果汁。豊かな甘味と、ほどよい酸味。絶妙なバランスで美味しさをぎゅっと閉じ込めた「中晩柑のフルコース」です。また、貯蔵性に優れる品種なので、他の中晩柑より長く市場に出回ることも期待されます!
――続いては、海の幸について教えてください!
さがぴん:佐賀県の南端に位置する太良町に竹崎カキというのがあります。元々、佐賀ではカキの養殖自体はあまり歴史がなかったのですが、実は有明海はカキの養殖に適した環境でした!
――な、なんでですか?
さがぴん:湾になっているので、川の水が流れ込んで、中で滞留し、塩分濃度が低くなります。有明海は湾の中に川から真水が入ってくるので塩分濃度が低いため、カキ本来の味を引き出し甘く感じやすいです。また、プランクトンが川から流れて来て、プランクトンが豊富であるため、育つスピードが速いです。有明海の竹崎カキは身がパンパンに詰まっているので、焼いても身が縮みません!
今や日本全国にいわゆる「カキ小屋」はありますが、30年以上前にカキを売っている有明海沿いの太良町の販売所の人がドラム缶で網焼きしてみようとやってみたのが、カキ小屋の始まりとなります。ということで、太良町はカキ小屋の発祥の地です。その後、全国のカキ漁をしている自治体の皆さんが視察にいらっしゃり、全国に広がっていきました。全国的な「カキ小屋」は実は太良町から始まった比較的新しい文化となります。
――私も太良町のカキ小屋に行きましたが、焼いても確かにあまり縮まなかったですね。おいしかったです。
さがぴん:一般的に流通しているカキとは甘さと大きさが違うのが特徴です。大体11月下旬ごろから獲れるようになります。例年であれば、3月にかけてドライブがてら竹崎カキを食べに太良に多くの方がいらっしゃいますが、今年はカキ漁師さんが「ポケットマルシェ」で販売するようになりました。これまで、佐賀の絶品は現地に行かなくては買えなかったのですが、2020年以降は、コロナでこのような状況になったのでネットでも買えるようになりました。そう考えると、今まで全国の方々がなかなか手に入らないものが手に入るようになったのはいいことかな、とも私は思っています。
ポケットマルシェ(宗徳丸|境田さん)
ポケットマルシェ(勇栄丸|大鋸さん)
――続いては、「牛」についてお伺いしたいです。スーパーや焼き肉店に行くと「伊万里牛」と「佐賀牛」がありますが、これらはブランド牛ですね。一体何が違うのですか? そして各々の特徴は?
さがぴん:どちらも黒毛和牛で、「伊万里牛」は伊万里市で生産されたブランド牛肉です。
「佐賀牛」は、(社)日本食肉格付協会の定める牛取引規格の最高の肉質である「5」等級および「4」等級のBMS「No.7」以上を「佐賀牛」と呼び、それ以外を「佐賀産和牛」と分けてブランド化されています。
日本のブランド牛は色々ありますが、基準の厳しさについては、佐賀牛はかなりハイレベルだと言われています。佐賀牛は、「仙台牛」に続き、日本で2番目に基準が厳しいとされています。
――その秘訣ってどこにあるんですか?
さがぴん:佐賀県には、北に天山・脊振山系、南西に多良岳があり、豊富な山野草や、「清水川」「竜門の清水」といった名水百選に選定された良質な自然水など、黒毛和牛を育てるやさしい自然環境に恵まれています。
最高級の牛を育てるためのえさは、多種類の原料を独自に配合したJAグループ佐賀の統一飼料を主に使用。この栄養たっぷりの濃厚飼料に加えて、素牛(もとうし)には丈夫に大きく育つ胃袋を作るための粗飼料が必要になります。その粗飼料として使われているのが、主に佐賀県産の稲わら。米どころである佐賀には稲わらが豊富にあり、県内の肥育牛農家は常に良質で安全なわらを手に入れることができます。
――稲の藁が大事ってことは、じゃあ、ここからは日本酒の話になりますよね?
さがぴん:はい、そうです。佐賀は実は九州では珍しい酒どころです。2~3月ぐらいは、新酒が出てくるシーズンにあたります。毎年1月~3月は「蔵開き」があります。新しい酒について、冬の間に作っていたものが出るよ!という、「お披露目会」を色々な酒蔵でやります。鹿島市では、毎年3月ごろに「鹿島酒蔵ツーリズム」も実施していました。6つの蔵が集まり、色々なイベントが行われるのです。この合同蔵開きには、2日で7万人ほど集まっていました。今年はコロナの影響で中止となっていますが、多くの人に味わってもらうために6蔵セットのオンライン販売を実施されています。
フランスのボルドーワインと聞けばすっかり世界のブランドワインとしてお馴染みですが、そのブランド化に貢献したのがフランスで制定された原産地呼称統制法です。その制度をルーツに、佐賀県もより良いものを届けようと、佐賀県産の原料100%を使用して味や品質に優れた製品を認定する「佐賀県原産地呼称管理制度」を2004年にスタートしました。
この「佐賀県原産地呼称管理制度」によって毎年、春と秋に佐賀県が自信をもっておすすめする佐賀のお酒「The SAGA認定酒」が選定されます。このThe SAGA 認定酒をまとめて購入できる場所がなかったので、昨年12月にSAGA BARオンラインショップを開設しました。現在18蔵の10商品がラインナップされていますので、気になる方はぜひご覧ください。
なぜ、佐賀で日本酒造りが盛んになったかといえば、江戸時代の終わりの藩主・鍋島直正公が、農閑期に余剰米を使った日本酒造りを奨励し、明治期の最盛時にはおよそ700の酒蔵があったそうです。今は23蔵ですが、元々700あった蔵のうち23の蔵が相当高いクオリティの日本酒を作っています!焼酎王国・九州では随一の日本酒県が佐賀県です。
――色々と教えて下さいましてありがとうございます。ここまで話は伺ったものの、やっぱり海に囲まれた佐賀は「魚介類」がウリでしょう。最後に魚介類について、そして他のエリアも含め、今一度おいしいものを教えてください!
さがぴん:唐津でいえば呼子のイカですね。佐賀県北部の玄界灘のイカが有名です。あと、寄生虫がないという完全養殖の「唐津Qサバ」は「当たらないサバ」として評判です。ユネスコ無形文化遺産にも登録されている「唐津くんち」の時に毎年、各家々で日ごろからお世話になっている人たちを、「くんち料理」でもてなす文化が唐津にはあります。そのおもてなし料理のメインとして、アラ(クエ)の姿煮をする家もあります。アラ(クエ)料理は昔から唐津では有名ですよね。
唐津の鮮魚店にて。
有明海に面する太良町では竹崎カキ、竹崎カニ、コハダ。コハダと芝海老は豊洲市場における取扱量日本一でして、江戸前寿司のコハダは佐賀県産が多いです。寿司に欠かせない海苔は17年連続日本一。ちなみに、この間ツイッターで話題になっていましたが、東京湾の形と有明海の形は似ているみたいですね。江戸前寿司のネタが有明海でとれるのも何か関係があるのかもしれないですね。
――あと、佐賀県は甘いものが充実しているという話も聞きました。どうやら長崎の出島から福岡までの「シュガーロード」というのがあるとのことで……。
さがぴん:シュガーロードとは、長崎から(北九州市)小倉までの砂糖の道です。長崎はカステラがあり、福岡は金平糖などがあります。その流れで佐賀には小城羊羹や丸ぼうろ、逸口香(いっこっこう)などがあります。
かくして昔から甘いものへの理解が深いからなのか、今は佐賀県内では「パフェ屋さん」が不思議と多いように感じます。佐賀市だけではなく、鳥栖市、武雄市や嬉野市にも有名なパフェのお店があります。
――そっか、佐賀は実は「スイーツ王国」だったんですね。
さがぴん:甘いものが根付いているな、というのがあります。関係あるかは分からないですが、森永製菓と江崎グリコも創業者が佐賀出身者です。知られざる“砂糖王国”じゃないですが。作家の北方謙三さんも佐賀出身ですが、同氏の曾祖父が、『新高製菓』を経営し、『新高キャラメル』という台湾で有名だったお菓子を作っていたそうです。第2次世界大戦前の日本における「4大菓子メーカー」といわれるのが、森永製菓、江崎商店(江崎グリコ)、新高製菓、そして明治製菓です。4つの中の3つの菓子メーカーの創業者は全て佐賀県出身だったのです。
――ここまで県内の様々なおいしいものを聞きましたが、やはり避けて通れないのが武雄と鳥栖です。この2つの有力な街のおいしいものを教えてください。
さがぴん:武雄はちゃんぽんです。私は県外出身なのですが佐賀に来るまで「佐賀ラーメン」「佐賀ちゃんぽん」があるとは知らずそれぞれ「形ができている!」ということに驚きました。武雄のちゃんぽんについては、「北方町」というところにかつて炭鉱があり、働く男たちに愛されたのが、栄養があり、ボリューム満点のちゃんぽん。武雄から他県にも展開している有名な「井手ちゃんぽん」以外にもちゃんぽんの名店は多数あります。国道34号線沿いの「武雄・北方ちゃんぽん街道」も是非検索して行ってみて下さい。
続いては鳥栖ですが、鳥栖は福岡と佐賀の境にあり、九州を十字で結ぶ交通の要衝です。JR鳥栖駅の開業は明治22年で、九州に初めて誕生した6つの駅の1つ。実は、この駅のホームにある立ち食いうどんの「中央軒」が人気で、九州で初めての立ち食いうどんが誕生したのは鳥栖駅です。日本で最も古い鶏飯弁当として「かしわ飯」や「立ち食いうどん」が有名で、途中下車や乗り換えでちゃちゃっとうどんを食べる文化があります。
あとは、焼売弁当もファンが多く、駅弁好きな方々には東の崎陽軒、西の中央軒のような言われ方をすることもあるそうです。
――ラーメンについてはどうですか?「佐賀ラーメン」ってものはあるのでしょうか?
さがぴん:ラーメンと言えば、やっぱり福岡というのがあるとは思いますが、佐賀のラーメンもまた別の特徴と魅力を持っていて美味しいと思います。佐賀ラーメンは、久留米ラーメンからの流れで、同様の豚骨スープですが、塩分、脂分とも控えめにさっぱりと仕上げられており、柔らかめの中太ストレート麺が特徴です。また、卵はゆで卵ではなく、生の卵黄をトッピングされることも多いです。
佐賀は海苔も有名なこともあり、美味しい海苔をトッピングされているものもあり、そのままの味、卵黄を絡めた味、海苔を溶かした味と、1杯で何度も楽しめるのも良いところだと思います!贅沢でたまらないですね…!お腹が空いてきました…!
佐賀は本当においしいものが多いのでぜひ、実際に食べたり、通販で買って佐賀を身近に感じていただきたいと思います!