刀剣乱舞ファン必見! 人斬り以蔵も愛したとされる佐賀の刀がすごすぎる!
2022年2月1日(火)から3月6日(日)まで、佐賀県立博物館(佐賀県佐賀市)で開催されるのが、コレクション展「忠吉から忠広へー集結! 初代忠吉-」です。刀剣男士・肥前忠広に所縁のある、刀工・初代忠吉の刀18口(ふり)のほか、歴代忠吉・忠広の作品が一挙に展示されます!
それを記念し、PCブラウザ&スマホアプリゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』とのコラボレーションも決定。展覧会参加前に、刀剣乱舞ファン&刀剣ファンはもちろん、ぜひ押さえておいてほしいポイントを、佐賀県立博物館の学芸員である阿部大地さんに伺いました!
関ヶ原の合戦で変わった、日本刀の在り方や作られ方
――今回展示される肥前忠吉の刀には、どんな特徴があるのでしょうか?
阿部 まず、刀の歴史について簡単に解説していきますね。現在の日本刀の形ができたのは平安時代中後期だといわれており、以降1600年の関ヶ原の合戦のあたりまでに作られた刀を「古刀」と呼びます。
しかし、関ヶ原の合戦以降、日本の治世は落ち着き、刀は人を斬る道具として用いられなくなります。その結果、およそ関ヶ原以降に生まれた刀を「新刀」と呼ばれるようになりました。
佐賀では、古刀の時代は、それほど刀鍛冶は多くなかったのですが、新刀になってから刀鍛冶が盛り上がりを見せました。今回展示する初代肥前忠吉の作品も、新刀になります。
――肥前忠吉はどんな刀工だったのでしょうか?
阿部 肥前忠吉は、佐賀鍋島家お抱えの刀鍛治で、九代にわたって同名を用いた刀工の名前です。初代忠吉は晩年に名を「忠広」に改めているため、「肥前忠広」とも呼ばれます。今回の展示では、歴代の中でも最も名工との誉れが高い初代忠吉の刀を展示しています。
佐賀の県民性に似てる? 基本に忠実な美しい佐賀の刀
――肥前忠吉をはじめ、佐賀の刀にはどんな特徴があるのですか?
阿部 刀は時代制作地域によって個性豊かなものがたくさんあります。そんな中でもよく言われるのは、「忠吉一門の刀は尋常で品質がどれもよい」ということです。風変わりな反りや癖のある造り込みをせず、一般的な日本刀イメージそのもの。実際に見ると非常に基礎に忠実に作られているのがわかります。刀って意外と上手下手な作品も多いのですが、佐賀の刀にはほとんどない。ある意味、工業製品風といえるほど、均一で規格品のようで、当時の生産能力の高さを表しています。江戸時代という時期に制作されながら、非常に良質な刀を多数生み出すことができていたのが特徴です。
――実直で控えめな佐賀県民性を表したような刀なんですね。
阿部 そうですね(笑)。あと、佐賀の刀は切れ味の鋭さにも定評があります。現在でこそ、刀は美術品として扱われますが、当時、まず大事だったのは実用性、すなわち切れ味でした。
江戸時代の刀は、試し切り職人が罪人の体を斬ってみて、刀の切れ味を競う格付けが行われていました。その記録をまとめた書物を見ても、250人以上刀工が出てくるなかで12人しか出なかった、最上級の格付け「最上大業物(さいじょうおおわざもの)」に初代・3代目の忠吉が入っています。
また、東西の刀の切れ味を「大関」「関脇」などと記した番付でも、忠吉の刀は「世話役」に位置しており、別格扱いでした。
実は、江戸、大阪に並ぶ、刀の名産地だった佐賀
――すごい! 全国的にも佐賀の刀は人気があったんですね。
阿部 当時、江戸、大阪と並んで、刀の名産地とされていたのが佐賀だったともいわれています。その理由のひとつは、刀工の文化が盛んだったこと。江戸時代以降、刀の流通は整ってきたので、このころにはどの城下町にも刀鍛冶がいました。
しかし、佐賀の場合は、本家の忠吉家のみならず、複数の分家が独立したり、さらに多数の弟子たちがいたなど、すごく盛り上がりを見せました。江戸時代の250年を通じて、肥前の刀鍛冶は100人以上いたのですが、これは他の地域ではあまり見られないと思います。忠吉一門は分家を含めて広がる巨大な刀工集団だったようです。
もうひとつ、佐賀の刀がそこまで広がった大きな理由は、佐賀藩が刀工を手厚く保護していたのも大きかったでしょう。忠吉一門の刀の品質が素晴らしかったため、全国で欲しがる人も多く、将軍家や大名家への贈答品としてもよく利用されていたようです。
――肥前忠吉の刀は、岡田以蔵も使っていたといわれています。それほどに武士たちが欲しがる刀だったのですね。
阿部 実のところ、岡本以蔵が使っていたといわれる忠吉の刀は、現存していません。銘だけでも残っていれば、どの代の忠吉が作ったものかが予想がつくのですが……。
一人の名刀工の人生を表すような18口(ふり)の刀を展示
――今回の展覧会の見どころを教えてください。
阿部 通常、刀は横に寝かせて展示されることが多いのですが、今回の展示会では初代忠吉の刀を立てて展示しています。これは実際に刀剣を鑑賞する際の見方をイメージしたもので、刀全体の姿が見やすくなるだけでなく、刃文もきれいに見えます。また、刃の反りや取っ手にあたる茎(なかご)の部分まで細かくみられるのが、大きなポイントです。
あと、今回は初代忠吉が最初に作った刀と、亡くなる年に作った刀まで18口を時系列に展示し、一人の刀鍛冶の人生を追える形になっています。初代忠吉の刀を、これだけの本数を並べられる博物館は、全国でも珍しいと思います。
また、初代の忠吉が刀を作り始めたのは、安土桃山時代から関ヶ原の合戦にかけてです。初期の刀は、人を切る道具でしたが、次第に世の中は安定し、人を斬る機会はなくなりました。初代忠吉は、まさに刀のあり方が変わりつつある時の時代を生きた刀鍛冶です。時代の変化とともに変わっていく刀の変化を見ていただくのも楽しいと思います。
――おすすめの観覧方法はありますか?
阿部 ぜひ、展示されている刀に極限まで近寄って、じっくりとその姿を見てほしいです。日本の刀は砂鉄から純度の高い玉鋼を取り出して作るので、樹木のように美しい層ができます。この模様は温度差によって変わるので、ひとつとして同じ模様はできません。さらに刃文の輝きも楽しめます。また、時代ごとに反り具合や流行も変わります。もし、そこから刀に関心を持ったら、ぜひ近くにある解説テキストを読んでもらいたいです。
肥前の刀はどれもバツグンにうまく作られています。一般論では、肥前の刀は基本に忠実なものばかりと思われがちですが、実際に並べてみると、それぞれすごくバラエティがあります。その違いについても、チェックしてほしいですね。
展示会を回るなら、図書館→本丸歴史館→博物館のルートがおすすめ!
――今回は「佐賀県郷土コレクション企画展」として、佐賀県立図書館と佐賀城本丸歴史館との合同開催だそうですが、どのルートで回るのが一番いいでしょうか?
阿部 佐賀駅からいらっしゃることを想定すると、最初に刀にまつわる和本を紹介している図書館へ行って、その後、佐賀城本丸歴史館では、戦国時代の龍造寺家が持っていたとされる脇差や日本最古の刀剣書とされる「銘尽(龍造寺本)」を見て、古い時代に思いを馳せた後、最後に私たち佐賀県立博物館に来ていただいて、江戸時代の忠吉の刀を見ていただきたいです!
【「佐賀県郷土コレクション企画展」イベント詳細】
【展示期間】2022年2月1日(火曜日)~3月6日(日曜日)
※毎週月曜日、佐賀県立博物館は休館日
1)佐賀県立図書館(1階ホール)
企画展「刀剣をめぐる書物の世界~佐賀県立図書館のコレクションから~」
・刀剣、刀剣書に関する図書
・館蔵の古文書などの郷土資料を紹介するパネル などを展示
(2)佐賀県立博物館(3号展示室)
コレクション展「忠吉から忠広へ——集結!初代忠吉―」
・肥前刀の刀祖にして、名工として名高い初代忠吉作の刀剣 などを展示
・初めて18口(ふり)を一挙に公開
(3)佐賀城本丸歴史館(御小書院(特別展示室))
テーマ展「龍造寺家の刀と文書」
・刀剣書「銘尽(龍造寺本)」を含む佐賀県重要文化財「龍造寺家文書(りゅうぞうじけもんじょ)」
・佐賀の戦国大名 龍造寺隆信ゆかりの資料 などを展示
イベントの詳細は下記サイトをご覧ください。
【『刀剣乱舞-ONLINE-』コラボ企画について】
コレクション展「忠吉から忠広へー集結!初代忠吉ー」にて、刀剣男士 肥前忠広に所縁のある刀工・初代肥前忠吉の刀18口(ふり)ほか、歴代忠吉・忠広の作品が一挙に展示されることを記念し、本展覧会とPCブラウザ&スマホアプリゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』との コラボレーションを実施します。
コラボ企画の詳細は下記サイトをご覧ください。
◆刀剣男士 肥前忠広の等身大パネルが県内2カ所に登場!
刀剣男士 肥前忠広の等身大パネル(通常)が「佐賀県立博物館3階の特別スペース」に、等身大パネル(内番)が「佐賀県立佐賀城本丸歴史館内」に登場します。
なお、刀剣男士 肥前忠広の等身大パネルは、全国初登場となります。
◆展覧会音声ガイド ナビゲーターには、声優 小松昌平さんが決定!
『刀剣乱舞-ONLINE-』刀剣男士 肥前忠広役の声優 小松昌平さんが、佐賀県立博物館コレクション展「忠吉から忠広へー集結!初代忠吉ー」の展覧会音声ガイド ナビゲーターに決定しました。刀剣の鑑賞方法や初代忠吉の特徴、わかりにくい歴代忠吉・忠広の違いなど展覧会の見どころを詳しく御案内します。
そのほか、オリジナルグッズのご用意なども多数!