「ブラックモンブラン」は、なぜ九州民のソウルフードになったのか? 竹下製菓の社長に聞いてみました【前編】
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「ブラックモンブラン」は、なぜ九州民のソウルフードになったのか? 竹下製菓の社長に聞いてみました【前編】

佐賀県民のみならず九州民のソウルフードといえば? そう問われた際、多くの人が名前を挙げるのが、バニラアイスをチョコレートとクッキークランチでコーティングしたアイスクリーム「ブラックモンブラン」です。

佐賀県といえば、もともと長崎からの砂糖の道・シュガーロードが有名ですが、竹下製菓も元は、現在佐賀銘菓として知られる「丸ぼうろ」の原型である「ぼうろ」などを作る菓子メーカーだったとか。そこで前編となる今回は、竹下製菓の竹下真由社長に、今年で誕生から52年を迎えるロングラン商品「ブラックモンブラン」の誕生秘話などを伺いました! 

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竹下製菓の竹下真由社長。

もともとは菓子メーカーだった竹下製菓

――竹下製菓さんは、現在の主力商品は「アイス」のイメージが強いですが、最初はお菓子メーカーだったそうですね。

竹下社長 はい、もともとは西洋菓子を作っていた会社だと聞いています。「シュガーロード」と言われるように、佐賀県は、長崎で海外から輸入された砂糖が運ばれていく道にあって、砂糖と同時に、西洋菓子のレシピも手に入りやすかった。そこで、明治27年以前から佐賀県鹿島市のあたりで西洋菓子を作って売るようになったのが、竹下製菓の始まりだと聞いています。

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――当時は、どんなお菓子を作っていたんですか?

竹下社長 当時のレシピが残っているのですが、それを見ると、「ぼうろ」や砂糖菓子、ビスケットのようなものを作っていたようですね。最も、古文書のようなレシピで、分量の記載などもすごくざっくりしているので、仕上がりは現代のものとはちょっと違うかもしれませんが(笑)。

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上写真:大正初期の竹下製菓店 佐賀市元町、左写真:銀世界(ビスケット)製造工場、右写真:ビスケット製造工業

小豆のアイスキャンデーから始まった竹下製菓のアイスづくり

――洋菓子を作っていたのに、アイスを作り始めたのはなぜだったんでしょうか?

竹下社長 アイスの製造は、いまから60年くらい前に始まりました。アイスがスタートした理由は、「夏枯れ」ですね。昔は、今みたいに冷房がある家が少なかったので、「夏の暑い時期には甘いものを食べたくない……」という人も多かったんです。そのため、夏場はあまりお菓子が売れなかったんですよ。

こうした「夏枯れ」に頭を悩ませているところ、当時はアイスが流行し始めていたので、「だったら、うちも夏場に食べやすいアイスを作って売ってみよう」と思ったようですね。

――最初に生まれたアイスはどんなものだったんですか?

竹下社長 小豆を使ったアイスキャンデーでした。これは、その当時、小豆を使ったお菓子を作っていたので、材料として手に入りやすかったためです。機械も何もないので、ゼロから手作りで小豆のアイスを作っていたようです。

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ふわふわケーキガツン、とみかん風味ロール 立体画像

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現在も、竹下製菓さんでは、アイス以外にも様々なお菓子を販売しています! コラボ品も多し!

当時の子どもたちに激震が走った「ブラックモンブラン」の衝撃

――そんな中、52年前に「ブラックモンブラン」が誕生したわけですね。

竹下社長 はい。竹下製菓でアイスを作り始めてから10年くらい経った頃、三代目社長が「ブラックモンブラン」を発案しました。きっかけは、経済視察団の一員としてアルプス山脈のモンブランの麓の町を訪れた際、「あの白い雪山にチョコをかけて食べたらさぞおいしいに違いない」と思ったそうです。

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モンブラン山(社長撮影)

――斬新な発想ですね……! そこで、あのリッチなアイスが生まれたんですね。

竹下社長 バニラにチョコとクランチを足すという濃厚なアイスになったのは、現地が非常に寒かったので、「寒い時でもおいしく食べられるアイスといえば、やっぱり濃厚なアイスの方がいいよな」と三代目が思ったからだと、当時を知る人からは聞いています。そして、この商品が売れたことで、竹下製菓は「お菓子の会社」から「アイスの会社」へと世間の認識が変わっていったように思います。

――様々なアイスがあるなかでも「ブラックモンブラン」は佐賀県民のソウルフードとして知られています。なぜ、こんなに人気が出たと思われますか?

竹下社長 ひとつは、インパクトだと思います。当時は、アイスの種類もいまほどたくさんなかったんですよね。その頃は、砂糖水に香料と着色料で香りと色を付けて凍らせたアイスキャンディーのような商品が主流でした。でも、そこにバニラアイスにチョコレートをかけて、さらにクッキークランチをまぶすというアイスが、画期的だったのだと思います。

だから、発売時の「ブラックモンブラン」は、単なるアイスというよりは、現代のスウィーツのような感覚が強かったんじゃないでしょうか。実際、50~60代の方とお話をすると、「ブラックモンブランが発売されたときは、本当にびっくりしたよ。あの豪華なアイスが食べたくて、小遣いを貯めて買いに行ったよ」と言われることも多いです。

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「ブラックモンブラン」が生き残れたのは、語り継ぎたくなるアイスだったから

――当時、それだけ多くの人にインパクトを与えたアイスだったんですね。

竹下社長 加えて、大きかったと思うのが、当たりくじの存在です。竹下製菓のアイスは、当たり付きの商品が多いのですが、くじが当たるかどうかのワクワク感って、とても楽しいものですよね。だから、その思い出も強いんじゃないかと思います。

そして、子ども時代に「ブラックモンブラン」でワクワク感を楽しんだ方々が、大人になってからも、そのエピソードをご自身のお子さんやお孫さんに語り継いでくださる。そのおかげで、いまでも生き残ってこれたのかな……と。

――確かに、佐賀県の人に「ブラックモンブラン」との出会いを聞いてみると、みなさん「物心ついたころから、家にあった」「親が良く買ってきて、食べさせてくれた」と言う人が多いですね。

竹下社長 小さい子が、自分からゼロベースでお菓子を選ぶことは難しいですからね。数十年前に比べると、格段にアイスの種類が増えた現代でも、若い世代の方が「ブラックモンブラン」を楽しんでくれるのは、上の世代が「ブラックモンブラン」をすすめてくれるからだと思います。本当にありがたいことですよね。

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「ブラックモンブラン」が九州限定であり続ける理由

――現在、「ブラックモンブラン」は、年間何本くらい売れているのでしょうか?

竹下社長 年間約2000万本くらいです。累計では、10億本を突破しています。

――いま、全国でも購入できるお店は部分的にあるそうですが、基本的には九州限定のアイスとのイメージが強いです。これは、なんでなんでしょうか?

竹下社長 発売当時に九州限定だったのは、流通と生産量の問題ですね。初期のころは、機械で作ったシンプルなバニラアイスに、手作業で、チョコをかけて、クランチをつけていたので、1日に1200本くらいしか作れなかったんですよね。現在は機械化で大量生産できるようになりましたが、それまでは九州北部で販売するくらいの量しか作れなかったんです。

――大量生産できる今でも、全国展開しないのはどうしてなんでしょう?

竹下社長 あえて九州限定にしているわけではないですし、関東や東北でも店舗さんによっては置いている店もあります。ただ、「ブラックモンブラン」がいつでもどこでも食べられるナショナルブランドのようになれるのか。また、私たちがそうなりたいのかと言われると、なかなか難しいな……と思うところも多いですね。

現在、「ブラックモンブラン」は九州でしか食べられないことに、価値を感じられる方も多いですし、単純に販売エリアを拡大するのがいいとも思いません。だから、今後も全国どこでも食べられる……という形にはならないのかなと。

埼玉工場を設置したのは、リスクヘッジのため

――昨年、埼玉県のアイス製造会社を買収され、関東にも本格的に進出されるのではと話題になり、喜んだ関東のファンも多かったみたいですね。

竹下 そういうお声をいただくのはすごくありがたいのです。でも、実は埼玉の工場は他社製品をOEMで作っているため、「ブラックモンブラン」などの竹下製菓の商品を作ってはいないんです。

なぜ、埼玉に拠点を作ったのかというと、最大の要因はリスクヘッジです。現在、佐賀県小城市に工場があるのですが、万が一この工場に何かあった場合、流通が保てなくなってしまいます。実際、2年前の令和元年佐賀豪雨でも、小城の工場の付帯設備が浸水したり、従業員が出社できなくなってしまうなどの出来事がありました。

こうした万が一のリスクを少しでも分散するために、関東に近い場所で拠点を探しているところ、ご縁があって埼玉に工場が見つかった……という経緯です。もちろん、拠点を持つことで、そこで働いている人やその周辺地域の方にも、新たに竹下製菓の商品を知ってもらえたらな、と思っています。

――関東や東北でも店舗によっては販売している、とのことですが、九州在住者以外が確実に竹下製菓のアイスを手に入れる方法はあるんでしょうか。

竹下社長 通販サイトが一番確実です。九州以外のエリアでも、手に入るお店はあるのですが、在庫状況によっては置いていないこともあります。「ブラックモンブランのバニラアイスに、自分でチョコをつけて手作り体験を楽しむ……という「おうちでブラックモンブラン」という通販限定の商品もありますので、ぜひチャレンジしていただきたいです。

おうちで


「作り立て」の味を楽しめる、ソフトクリームとは

――現在は定番の「ブラックモンブラン」のほかに、サイズの大きい「スペシャルブラックモンブラン」やチョコレートアイスがメインの「トリプルチョコレート」など、種類がいろいろありますね。

竹下社長 通年で販売しているのは、「ブラックモンブラン」「スペシャルブラックモンブラン」「トリプルチョコレート」だけで、その他は季節限定・数量限定で販売しています。期間限定商品でいうと、「クッキー&クリーム」や「あまおう苺」などはすごく売れますね。毎年、だいたい春夏、秋冬に新商品が出るのですが、次の秋冬には「ティラミス」の発売を予定しています。

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ーーティラミス、おいしそうですね!

竹下社長 あと、いま、私たちが経営しているアパホテル佐賀駅南口の1Fにあるカフェでは、「ブラックモンブラン」のソフトクリームの販売を始めました。

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――なぜ、ソフトクリームを販売しようと思われたんですか? 

竹下社長 もともとアイスクリームって、ソフトクリーム状のものを冷やして、カチコチにして販売しているものなんですね。一般流通しているアイスもおいしいのですが、工場で作られた出来立てのソフトクリーム状のアイスは、作り立てならではの別のおいしさがあります。

そこで、「このおいしさも、お客様に味わってほしいな」と思った末に生まれたのが、このソフトクリームです。工場で作ったばかりのアイスに近い状態でご提供しているので、ぜひ「ブラックモンブラン」がお好きな方には楽しんでいただきたいです! いまなら、限定で「あまおう苺」バージョンも販売しています。

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※後編「「ブラックモンブラン」はじめ、竹下製菓の商品はなぜ人気なのか?竹下社長に聞いてみました【後編】」はこちらからどうぞ!



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